Life isn't about waiting for the storm to pass. It's about leaning to dance in the rain.

コロナ禍が過ぎて来日ミュージシャンがまた来るようになったが、またいつ観られなくなる時が来るかわからないので、せっせと小まめに観に行っていたら Blue Note Tokyo のポイントが貯まり、前回行った時にミュージックチャージが無料になる招待券を貰った。

机の引き出しにしまっておいたのを思い出してその券を見てみると期限切れ間近だったので、焦って店に問い合わせるとイスラエル出身のミュージシャン Avishai Cohen Trioが来日中であと一席しか空いていないとのことだった。

Avishai Cohen Trioはアルバムも聴いたことがなかったが、イスラエルのミュージシャンには興味があるので、その一席をおさえてもらって観に行ってきた。

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もう15年くらい前になるがイスラエルには行ったことがある。

向こうの人たちにもいろいろお世話になった。

テルアビブのジャズクラブにライブを観に連れて行ってもらったり、現地で有名なミュージシャンをいろいろ教えてもらってCDをたくさん買って帰ったのでイスラエルのミュージシャンのレベルの高さも知ってはいたが、それでも予想を超えてAvishai Cohen Trioはすごかった。

リーダーのベーシストAvishai Cohenは言うまでもないが、ドラムもピアノも素晴らしかった。

テクニックは当たり前のように超絶技巧で、その上で曲は変拍子が別の変拍子にパタパタとマジックのように変化したり、知的で計算され尽くした演奏で何をどうやっているのかはわからないんだけどアクロバティックな瞬間を途切れずにたくさん生み出すステージで圧倒された。

 

イスラエルは今は情勢が混乱を極めていてとても行くことはできないだろうけどいつかまた訪れてみたい国だ。

美しい公園の芝生の広場にあるステージでオーケストラのフリーコンサートが毎週土曜日の夕方に開催されていた。ビールやジュースが配られていてそれを片手に席もない芝生に座ったり寝転んだりしながら皆がクラシックの野外演奏を楽しんでいた。

見学したキブツという独自の仕組みの中で暮らす人々の集落はとんでもなく知的で進んでいて、そこだけで循環可能な生活が運営されていて未来を見ているようだった。

ワイナリーもあるし、地ビールもドイツに負けず劣らず美味しかった。

スーパーに買い物に行くと入り口でライフルを持った兵士が「武器持ってる?」と笑顔で聞いてくる。

空港も公共の場でもイスラエル人が一緒だったので特に怪しまれなかったが、日本人だけだったらいろいろ大変だっただろう。

普通に見えるけど常にテロや戦争が間近にある国なのだなと色々なところでうかがえたし、50年前にテルアビブ空港で銃を乱射し20人以上を殺害するという大変なテロ事件を起こしたのは日本人なのだ。

イスラエル人には彼らにしかわからない閉じた世界の中にある知的な理論とか方法論とか哲学みたいなものを共通して”根本”に持っているような不思議な雰囲気がある。

そして、そういう”根本”を徹底して教育され、それを後世に繋いでいく文化の中で育ち、18歳になると義務である厳しい兵役に男女ともに行き、それを経て心身ともに鍛え上げられた上で、感情は理屈の次にあるような理知的な深さを皆が共通して身につけている。

今回 Avishai Cohen Trio を観て、メンバーの、なにかを諦めたような少し寂しい光のある目を見てそんなことを色々思い出した。あるいは、時差ボケで疲れていただけかもしれないけど。